事業継続か廃業か──経営者が後悔しないための判断基準

事業を続けるか、たたむか。

経営者なら、一度はこの問いの前で足が止まったことがあるのではないでしょうか。

売上が伸び悩み、借入の返済が利益を吸い取っていく。

そんな景色のなかで「もう潮時かもしれない」とふと思う夜もあります。

ただ、「やめる」という言葉は、なかなか口に出しにくいものです。

従業員のこと、家族のこと、取引先のこと。

背負ってきたものが多いほど、決断は重くなります。

この記事では、事業を続けるかたたむか迷ったときに、経営者として見ておきたい論点をお伝えします。

答えを急がず、まずは現状を見るところから始めてみてください。

目次

「たたむ」と「続ける」は同じ問いの裏表

事業をたたむ選択と、続ける選択。

このふたつは正反対のように見えますが、根っこの問いは同じです。

「このまま続けて、家族や従業員、自分自身を守れるのか」

ここを見ずに、続けることそのものを目的にしてしまうと、判断は後手に回りがちです。

逆に、たたむことだけを目的にしてしまうと、ほかの選択肢が見えなくなります。

事業承継・廃業支援の現場でよく言われるのは、「事業を続けることと、会社を続けることは違う」という考え方です。

会社をいったん閉じても、事業そのものを別の場所で続ける道はあります。

これまで培ってきた技術、お客様との関係、信用──こうした資産は、会社のかたちが変わっても残せます。

「たたむ=すべてを失う」ではありません。

この前提が変わるだけで、見える景色はずいぶん違ってきます。

「たたむ」にもいくつかの形がある

事業をたたむ、と聞くと多くの方が「破産」をイメージしがちです。

しかし実際には、たたみ方にもいくつかの選択肢があります。

たとえば、自主的に事業をやめて会社を清算する自主廃業。

手元の資金や残債務の状況によっては、債権者との合意形成を進めながら整理していく方法もあります。

事業の一部を別会社に切り離して、不採算部分を整理する第二会社方式という考え方もあります。

後継者や第三者に事業を引き渡しながら、負債は引き継がせない形で承継する設計も、選択肢のひとつです。

どの道を選ぶかで、経営者個人の生活や家族への影響、再起の難易度は大きく変わります。

「もう破産しかない」と言われた局面でも、相談先を変えれば見える選択肢が変わってくることもあるため、結論を急がずに複数の道を比較する時間を持つことが大切です。

まずは数字に向き合ってみる

事業の継続を考えるとき、最初に見たいのは数字です。

ただし、ここでいう数字は「売上」のことではありません。

売上が高くても、利益が残らなければ事業は痩せていきます。

毎月、紙にメモする程度でかまわないので、次の3点を書き出してみてください。

  1. 営業利益が、毎月の借入返済をきちんとまかなえているか
  2. 現金残高が、半年後・1年後にどこまで減っていく見通しか
  3. このペースで進んだとき、いつ資金がショートしそうか

書き出してみて、ひとつでも気がかりな点があれば、その時点で相談先を探す価値があります。

数字から目を逸らし続けると、判断のタイミングは遅れがちです。

遅れた分だけ、選べる選択肢は狭まっていきます。

「事業の根幹は事業にではなく、会計にある」と言われます。

日々の現場と同じくらい、毎月の数字に向き合う時間を取ってください。

お金と資産をどれだけ残せるか

次に考えたいのは、「たたむにしても、続けるにしても、お金と資産をどれだけ残せるか」という観点です。

法的な手続きに踏み込んでしまうと、長年積み上げてきた手元資金、自宅、個人資産は、生活の再出発のためにほとんど残らないかたちで処理されていきます。

家族のこれからの生活を考えたとき、本当に大切なのは「いかにお金と資産を残したかたちで次に進むか」という観点です。

私たちは、「どんな状態でも、破産せずに解決できる可能性を最後まで模索する」というスタンスで支援にあたっています。

事業を立て直すにしても、たたむにしても、その先の生活基盤をどれだけ守れるか。

ここが、経営者ご自身とご家族のその後を大きく左右します。

たたむことを選んだとしても、家族との生活はそのあとも続いていきます。

お金と資産を可能なかぎり手元に残しておけば、次の人生を歩み始める足場は、しっかり残せます。

判断のタイミングを後ろにずらさない

もうひとつ大きいのが、いつ判断するか、というタイミングの問題です。

業績が悪化してから動くより、業績や時間に余裕があるうちに次の手を考えるほうが、選べる選択肢は格段に広がります。

リスケジュールに入る前であれば、経営者保証を外せる道もまだ開けている状態です。

不動産の名義の見直しや根抵当の組み替えなど、平常時にしかできない準備もあります。

「もう少し頑張ってから考えたい」という気持ちは、よくわかります。

ただ、頑張りすぎてから動こうとすると、銀行交渉も承継相談も、選びにくい局面に入っていきます。

「まだいける」と思っている時期こそ、実はいちばん打ち手の幅が広い時期です。

業績や時間に余裕があるうちに、いまの状態を一度棚卸ししておく。

それだけで、いざというときに選べる手の幅はずいぶん違ってきます。

家族と少しずつ話しておく

判断を進めていくうえで、もうひとつ意識しておきたいのが、家族との対話です。

事業の進退は、経営者ひとりの人生では完結しません。

配偶者の生活、子どもの将来、自宅やマイホームローン、親の介護。

事業の判断は、家族の生活の土台と密接につながっています。

「心配をかけたくない」「もう少し見通しが立ってから話そう」と思っているうちに、家族との温度差が広がっていくケースは少なくありません。

深刻なすべてを共有する必要はありませんが、「いま会社の状況はこういう局面にある」「念のため、こういう選択肢も考えている」というレベルの話を、平常時のうちから少しずつ重ねておくと、いざというときの判断はずいぶん楽になります。

事業を続けるか、たたむか──ひとりで結論を出さない

事業を続けるか、たたむか。

この問いに、ひとつだけの正解はありません。

会社の状況、家族の事情、これからの人生で大切にしたいもの。

ここをひとつずつ見ていけば、進むべき方向は自然と見えてきます。

答えは、外から借りてくるものではなく、ご自身の状況のなかにすでにあるものです。

とはいえ、ひとりで結論まで持っていくのは簡単ではありません。

経営も家計も、年月をかけて積み上げてきたものほど、客観的に見直すのは難しいものです。

だからこそ、第三者の視点を入れて棚卸しする時間を、どこかで取っていただきたいところです。

もし少しでも心当たりがあれば、まずは一度ご相談ください。


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