東京商工リサーチが発表した2025年の集計で、企業の休廃業・解散が6万7,210件と過去最多を更新しました。
前年比は7.2%増。
倒産と合わせた市場退出件数は7万7,000件台に達する見込みで、いずれも統計開始以来の最多水準です。
象徴的なのは、退出した企業の代表者のうち60代以上が90.6%を占め、初めて90%台に乗ったこと。
80代以上の比率も34.0%と、初めて30%を超えました。
「事業承継支援」という言葉が広く語られるようになって久しい一方で、現場では多くの高齢経営者が承継を選ばずに会社を畳む現実があります。
この記事では、休廃業・解散が過去最多に至った構造を整理しつつ、後継者不在に直面している経営者の方が今のうちに整えておきたい選択肢を、現場の声をもとに整理します。
休廃業・解散が過去最多に達した3つの構造
6万7,210件という数字の中身を読み解くと、業種を越えて重なっている3つの構造が見えてきます。
経営者の高齢化と後継者不在
退出企業のうち、代表者60代以上が90.6%、80代以上が34.0%。
「自分の代で締めくくる」と決めて畳む経営者の数が、ここ数年で確実に積み上がっています。
子どもや親族に継ぐ気がない、社内に後継候補がいない、第三者承継の準備にまで手が回らない…理由はそれぞれ違っても、結末はどれも休廃業に収斂していきます。
事業承継支援のマンパワー不足
政府・自治体・商工会議所・金融機関による事業承継支援は、ここ数年で大きく拡充されてきました。
一方で、相談を受けられる支援人材の数には限りがあります。
承継計画の作成、候補者の選定、株式の集約、個人保証の整理…一件あたりの所要時間が長い性質の仕事のため、相談窓口が増えても、最後まで伴走できるケースには限りが生じやすい構造です。
業種ごとの偏り
業種別の内訳を見ると、サービス業他が2万1,961件で全体の32.7%、建設業が1万283件、小売業が7,903件。
前年からの増加率では、情報通信業が15.2%増で最大の伸び。
業種を問わず波が広がっている一方で、地域インフラを支えてきた建設業や小売業が、後継者不在の波と特に強く重なっていることが見えてきます。
「赤字企業率47.2%」が示すもの──黒字でも畳む経営者の存在
休廃業・解散企業のうち、最終損益が赤字だった企業は47.2%。
裏を返すと、52.8%は黒字のまま会社を畳んでいることになります。
倒産(破綻による強制的退出)と休廃業・解散(経営者の判断による自主的退出)の違いが、この数字に表れています。
業績はまだ回っているのに、後継者がいない、自分の体力が続かない、ここで畳むのが家族と取引先にとって最善──そうした判断で、会社を整然と閉じる経営者が半数を超える現実。
畳むという選択それ自体は否定するものではないものの、「畳むしか道はないのか」「他の選択肢を並べたうえでの結論なのか」を整理する時間は、すべての経営者にとって必要な工程です。
後継者不在の経営者が直面する3つの壁
後継者不在のまま事業を続けてきた経営者の方が、承継準備に踏み出すときに直面する論点を整理しておきます。
「自分はもう何もできない」と感じる前に、ひとつずつ並べてみる価値がある項目です。
壁①──候補者の不在と固辞
子どもがいても継ぐ気がない、社内に後継者の素養を持つ社員はいるが手を挙げてくれない、第三者M&Aの相手探しにまで踏み出せない。
後継者の不在は、単に「人がいない」という状態ではなく、「家業の重さを引き受けたい人が周囲にいない」状態を意味します。
家族関係・人間関係・本人の人生設計が複雑に絡むため、解決に時間を要する論点です。
壁②──個人保証と引き継ぎリスク
会社の借入の多くには、代表者の個人保証が付いています。
後継者を立てる場合、その個人保証を「引き継いでもらう」か「外してから渡す」かで、後継者の経営自由度は大きく変わります。
経営者保証ガイドラインのもとで保証を外す道は、平常時のうちに財務基盤を整えて初めて開ける性質のもの。
リスケに入ってからでは、現実的に難しくなる場面が多いと言われています。
もうひとつ、見落とされがちな問題があります。
リスケジュールを実行し、一定期間をやり過ごしたあとに通常弁済に戻して、利益を出して存続している事業体は、現場の経験則としてほとんど存在しません。
月々の負担を軽くした結果、経営の構造的な課題に手をつける時間とエネルギーが奪われ、リスケ期間が終わるころには次の延長を申し入れざるを得ない状態になっている。
そんな循環を、たちばなはじめは何度も現場で見てきました。
承継準備に必要な時間そのものが、リスケのなかで失われていく構造です。
厳しい話に聞こえるかもしれませんが、これが現実です。
もし信じられないと感じる方がいらっしゃれば、ぜひお付き合いのある銀行員や税理士の方に、こう聞いてみてください。
「リスケから通常弁済に戻して、利益を出して存続している事業体は、どのくらいありますか?」と。
おそらく多くの方が、「ない」もしくは「ほとんどない」と答えるはずです。
とはいえ、すでにリスケに入っている方も、諦める必要はありません。
リスケ後でも取り得る選択肢は確かに残されています。
サービサー対応を見据えた組み立て直し、自宅や個人資産を守る保全設計、再生スキームのゼロからの組み立て…。
リスケ前と比べて選べる手は少なくなるとはいえ、まだ動ける余地は十分にあります。
お一人で抱え込まず、まずは一度ご相談ください。
壁③──取引先・金融機関への波及
長年の取引先、地元の金融機関、地域コミュニティ。
承継や廃業の決断は、自社だけで完結せず、周辺の関係者に影響が及びます。
「あの会社が畳むらしい」という情報が早めに広がると、仕入れ条件や与信が変化する場合もある。
だからこそ、計画と発表のタイミングを慎重に組み立てる必要があります。
今のうちに整えたい承継準備の3つの視点
業績の谷や体力の限界に追い込まれてから決断するのではなく、平常時のうちに整えておきたい打ち手を、3つの視点で整理します。
視点①──親族・社内・第三者の比較を平常時に並べる
後継者の候補を「親族」「社内」「第三者M&A」の3つに分けて、それぞれが取れる可能性と、譲渡に必要な準備期間を整理します。
たとえ「うちには無理だろう」と感じる選択肢でも、一度数字と条件で並べておくと、後で見直す土台になります。
事業の規模、地域での評判、業種の希少性によっては、第三者M&Aで意外な相手が現れることも珍しくありません。
視点②──個人保証・自宅・資産を「渡す前提」で整理する
承継するにしても廃業するにしても、個人保証・自宅・事業用不動産・株式・生命保険といった経営者個人にひもづいた資産と負債を、平常時のうちに棚卸しすることが起点です。
「自分の頭の中だけにある」状態を、配偶者または信頼できる家族と一緒に見える化する。
これだけで、いざというときの判断速度が変わります。
視点③──廃業を選ぶ場合も「整然と畳む」設計をしておく
承継が現実的でないと判断した場合でも、廃業=清算をいかに整然と進めるかは、家族と取引先と従業員を守るうえで欠かせない論点です。
手元資金、賃貸契約、リース、在庫、雇用、税金、個人保証…これらを業績悪化のなかで畳もうとすると、本来回避できたはずの負担が家族の生活基盤に及びかねません。
業績が比較的安定しているうちに撤退の設計を済ませておくほうが、選べる手の幅は広く保たれます。
「畳むしかない」と感じる前に並べておきたい選択肢
経営者の方が「もう畳むしかない」と口にされるとき、まわりの専門家から提示される道筋がほぼ廃業や清算一択だった、というケースも少なくありません。
専門領域の構造上、相談先の得意分野に寄った選択肢が前面に出るのは自然なこと。
だからこそ、相談する側が事前に「他にどんな道があるのか」を俯瞰しておくと、判断の精度が変わってきます。
具体的には、親族外承継のスキーム設計、地域の同業者との統合、ホールディングス型再編、業種特化M&A仲介の活用、そして金融機関との交渉方法を見直して資金繰りを立て直すことで承継準備の時間を確保する道。
どれを選ぶにしても、業績の谷で迫られる決断より、平常時の検討のほうが圧倒的に手札は広く残ります。
たちばなはじめの体験から──「最後まで自分で選ぶ」ために
たちばなはじめ自身、かつて事業の失敗から、返済が立ち行かなくなった経験があります。
当時、まわりの専門家から提示された道筋はほぼ「破産」一択でした。
それでも本人は、金融機関との交渉方法を見直すアプローチを選び、法的な手続きに頼ることなく事業を再生させました。
その実体験が、現在の支援活動の出発点です。
2026年5月時点で、たちばなはじめのもとに寄せられた相談実績は累積9,300件超、実際の支援に至ったケースは2,000件以上にのぼります。
そのなかには、後継者不在に直面した高齢経営者の方々、家業を整然と次世代に渡したいと考えるご家族、廃業ではなく承継の道を残したい現役世代の方々が、業種を問わず数多く含まれます。
「結末を自分の手で選ぶ」という姿勢を、現場で何度も共有してきました。
まとめ──選択肢を並べる時間を、今日から
休廃業・解散が過去最多に達したというニュースは、業界横断の構造変化を映す数字であると同時に、まだ事業を続けている経営者の方々への警報でもあります。
経営者の高齢化、後継者不在、個人保証、家族の生活基盤、地域コミュニティへの影響。
整理する論点は多いものの、順番に並べていけば動ける手は必ず見えてきます。
大切なのは、追い込まれてから決断するのではなく、半歩でも早く手札を並べておくこと。
親族・社内・第三者の3つの比較、個人保証と資産の棚卸し、整然と畳む設計…1つずつでも積み重ねるほど、ご家族と従業員に残せる選択肢は広がります。
承継準備の判断軸を手元に置きたい方には、たちばなはじめが書き下ろした無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』をご活用いただけます。
経営者保証・資産保全・承継設計の論点を、現場目線でまとめた1冊。
家族と取引先に何を残したいかを言葉にする、その起点として使っていただけます。
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教科書の内容を概論としてお伝えする場であり、たちばなスキームの全体像を受け取れる時間としてご活用ください。
すでに具体的な決断を考え始めている方、後継者・M&A・廃業の比較検討に入っている方は、無料の個別相談へ。
長年積み上げてきた事業の価値を、ご家族と次の世代にどう渡していくか。
今日できる一歩を、一緒に整理していきましょう。
資金繰りの課題を抱える経営者の方へ3つのご案内
あなたの選択肢を、一緒に考えませんか?

