東京商工リサーチが発表した2025年の倒産統計で、老人福祉・介護事業者の倒産件数が176件と、2年連続で過去最多を更新しました。
2019年比でおよそ60%増。
なかでも訪問介護事業の倒産は91件と3年連続で最多を記録し、前年から12.3%増えました。
マイナス改定、ヘルパー不足、ガソリン代の上昇…地域の生活を支えてきた小規模事業者ほど、複数の風が同時に吹きつける状況に置かれています。
この記事では、訪問介護を中心に介護事業の倒産が過去最多に至った構造をまとめつつ、小規模事業者の経営者が今のうちに備えておきたい資金繰り改善の選択肢を、私たちの経験をもとにお伝えします。
報酬改定が前提となる業界だからこそ、平常時の備えが結末を分けます。
介護事業の倒産が過去最多に至った3つの波
176件という数字は、特定の大手の経営破綻ではなく、地域に根づいた小規模事業者の連続的な力尽きの集積です。
倒産事業者のうち、資本金500万円未満が72.7%、従業員10人未満が80.6%。
家族経営や少人数チームで運営してきた事業所ほど、現状の経営環境に耐えにくくなっている実態が浮かびます。
マイナス改定の影響が訪問介護に集中している
2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。
一件あたりの収益が下がる一方で、移動時間・ガソリン代・スタッフの人件費といったコストは下がっていません。
ヘルパーが現場を1件回るごとに発生する固定的なコストは変わらず、報酬だけが減る構造。
月の延べ訪問件数で帳尻を合わせようとすると、ヘルパーの稼働時間に上限があるため、スケジュール上の打ち手も限られていきます。
ヘルパー不足と人件費上昇
有資格者の高齢化、若手の参入の少なさ、他業種との賃金格差。
訪問介護の担い手不足は構造的な課題として続いてきました。
政府の処遇改善加算で賃上げの後押しがあっても、他産業の賃上げ幅と比較すると追いつけていない現実があります。
生産性向上加算をうまく活用できない小規模事業者ほど、人材確保の競争で後手に回りやすい状況です。
燃料費・光熱費・固定費の上昇
訪問介護事業はヘルパーの移動を伴うため、ガソリン代の上昇が直接コストに跳ねてきます。
事業所の家賃・通信費・光熱費の上昇も重なり、固定費の総量がここ数年で着実に増え続けている状況です。
一方で報酬は上限が決まっているため、コスト増の分を価格に転嫁できない業界の宿命があります。
倒産の中身を読み解く──小規模ほど「販売不振」が80%
2025年の介護事業者倒産176件のうち、原因として「売上不振」が約80%を占めます。
ただし、これは「利用者が来ない」という単純な話ではない構造です。
利用者数や訪問件数は維持できているのに、報酬改定とコスト上昇のはさみ撃ちで粗利が削られ、月末の資金繰りが回らなくなる──こうしたケースも統計上は「売上不振」に集計されます。
つまり、打ち手は「もっと利用者を集める」だけでは足りません。
報酬構造の中で取れる加算の見直し、人員配置の組み直し、コスト構造の点検、そして資金繰りの立て直し。
複数の軸を同時に動かす視点が必要になります。
訪問介護経営者が今のうちに押さえたい資金繰り対策
業界の波に押し流される前に、小規模事業者の経営者ほど、平常時のうちに備えておきたい打ち手があります。
介護事業ならではのキャッシュフロー構造を踏まえた、3つの視点をまとめます。
視点①──介護報酬の入金サイクルを前提に資金繰り表をつくる
介護報酬は、サービス提供月の翌々月に入金される構造です。
つまり4月分のサービス売上は、6月末まで現金として手元に届きません。
一方で、ヘルパーへの給与、ガソリン代、家賃、社会保険料は、サービス提供月のうちにどんどん出ていきます。
この2か月のずれが、運転資金の必要額を膨らませる原因です。
毎月の入金と支出を、できれば日次の解像度で見える化し、半年先まで資金がショートしない月が続くかを数字で確認しておく。
介護事業者ほど、この基本動作が経営の生命線になります。
視点②──加算・公的支援の漏れを点検する
処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等加算、生産性向上加算。
介護報酬には、要件を満たせば取れる加算が複数あります。
書類整備や研修記録の準備が必要な加算は、「忙しくて手が回らない」という理由で取りこぼされやすい一方、年間で見ると相当額のキャッシュフロー差になります。
制度融資や地域の補助金、人材確保事業の助成金なども、知っているかどうかで使える金額が変わってきます。
社労士・行政書士など、加算と助成金の運用に強い専門家との連携を、平常時のうちに組み上げておきたいところです。
視点③──リスケに入る前に融資の組み直しを検討する
月々の返済が重く感じ始めたとき、頭に浮かびがちな選択肢が「リスケジュール(返済条件の変更)」かもしれません。
一時的に楽になる打ち手ではあるものの、経営者保証ガイドラインのもとで代表者保証を外す道は、リスケに入る前と入った後で大きく狭まる構造です。
月々の返済を下げる目的でリスケに踏み切ると、自宅や家族の生活基盤を守る選択肢を自ら手放すことにもなりかねません。
リスケを決める前に、増額融資・借換え・保証付き融資・公的金融機関の制度融資といった組み合わせで、現状を立て直せる余地が残っていないかを一度確認する。
たちばなはじめがもっとも強くお伝えしているメッセージのひとつです。
もうひとつ、見落とされがちな問題があります。
リスケジュールを実行し、一定期間をやり過ごしたあとに通常弁済に戻して、利益を出して存続している事業体は、現場の経験則としてほとんど存在しません。
月々の負担を軽くした結果、経営の構造的な課題に手をつける時間とエネルギーが奪われ、リスケ期間が終わるころには次の延長を申し入れざるを得ない状態になっている。
そんな循環を、たちばなはじめは何度も現場で見てきました。
本来取れるはずだった選択肢が、リスケのなかで少しずつ削られていく構造です。
厳しい話に聞こえるかもしれませんが、これが現実です。
もし信じられないと感じる方がいらっしゃれば、ぜひお付き合いのある銀行員や税理士の方に、こう聞いてみてください。
「リスケから通常弁済に戻して、利益を出して存続している事業体は、どのくらいありますか?」と。
おそらく多くの方が、「ない」もしくは「ほとんどない」と答えるはずです。
とはいえ、すでにリスケに入っている方も、諦める必要はありません。
リスケ後でも取り得る選択肢は確かに残されています。
サービサー対応を見据えた組み立て直し、自宅や個人資産を守る保全設計、再生スキームのゼロからの組み立て…。
リスケ前と比べて選べる手は少なくなるとはいえ、まだ動ける余地は十分にあります。
お一人で抱え込まず、まずは一度ご相談ください。
「廃業しかない」と感じる前に揃えておきたい選択肢
介護事業の経営者の方が「もう廃業しかない」と口にされるとき、相談先によって提示される道筋が大きく違ってくる現場の声があります。
専門領域の構造上、相談先の得意分野に寄った選択肢が前面に出るのは自然なこと。
だからこそ、相談する側が事前に「他にどんな道があるのか」を俯瞰しておくと、判断の精度が変わってきます。
具体的には、地域内の同業事業者との統合・連携、社会福祉法人や医療法人グループへの事業譲渡、ホールディングス型での再編、そして金融機関との交渉方法を見直して資金繰りを立て直す道。
どれを選ぶにしても、業績の谷で迫られる決断より、平常時の検討のほうが圧倒的に手札は広く残ります。
たちばなはじめの体験から──「破産せずに済む道」を探る支援の出発点
たちばなはじめ自身、かつて事業の失敗から、返済が立ち行かなくなった経験があります。
当時、まわりの専門家から提示された道筋はほぼ「破産」一択でした。
それでも本人は、金融機関との交渉方法を見直すアプローチを選び、法的な手続きに頼ることなく事業を再生させた経験を持っています。
家族の生活と再起の足場を、お金や資産を残した形で守り抜いた経験です。
追い詰められた景色を知っている立場として、たちばなはじめは現在も「どんな状態でも、破産せずに解決できる可能性を最後まで模索する」というスタンスで支援活動を続けています。
事業を立て直すにしても、整然と畳むにしても、お金や資産を残せる形を最後まで探る。
これが、現場で一貫して大切にしてきた姿勢です。
地域の介護を支えてきた訪問介護・通所介護・小規模多機能・グループホームの経営者の方々を含め、これまで多くのケースで「破産以外の選択肢」を一緒に組み立ててきました。
介護報酬制度・指定取消リスク・人員配置基準など、業界ならではの法務論点が絡むテーマだからこそ、顧問の弁護士・税理士と連携しながら、契約と法的な手続きの面も含めて支える設計になっています。
「地域から事業所が消えると、利用者と家族の生活も同時に消える」──業界ならではの重さを、現場で何度も共有してきた言葉です。
「もう資金繰りが回らない」「廃業しかないと言われている」──そんな切羽詰まった状況にある方も、どうかひとりで結論を出さないでください。
理想は業績の谷が来る前に踏み出すことですが、追い詰められた局面に立たされている方にも、まだ打てる手は残されています。
どんな状態でも破産せずに解決できる可能性を最後まで探る、という姿勢で支援を組み立てる。
タイミングを問わず、まずはご相談ください。
まとめ──地域の介護を守るために、平常時の備えを
介護事業者の倒産が過去最多に達したという数字は、業界の苦境を映すとともに、まだ営業を続けている事業者の方々への警報でもあります。
報酬改定の方向、ヘルパー不足、燃料費、家族の生活基盤、個人保証。
押さえる論点は多いものの、順番に揃えていけば取り得る手は必ず見えてきます。
大切なのは、業績の谷に追い込まれてから決断するのではなく、半歩でも早く手札を揃えておくこと。
半年先まで見える資金繰り表、加算・助成金の点検、リスケ前の融資の組み直し…1つずつでも積み重ねるほど、未来の選択肢は広がります。
業界ならではの資金繰り構造と、リスケ・経営者保証・資産保全の論点をまとめて手元に置きたい方には、たちばなはじめが書き下ろした無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』をご活用いただけます。
介護事業者の経営判断にも、活かせる視点が詰まった内容です。
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教科書の内容を概論としてお伝えする場であり、たちばなスキームの全体像を受け取れる時間としてご活用ください。
すでに月々の資金繰りに不安を感じている方、リスケや廃業を考え始めている方は、無料の個別相談へ。
地域の生活を支えてきた事業所の灯を、ここで消さないために。
今日できる一歩を一緒に組み立てていきましょう。
資金繰りの課題を抱える経営者の方へ3つのご案内
あなたの選択肢を、一緒に考えませんか?

