「粉もん」倒産が過去最多28件──物価高・人手不足で追い込まれた経営者の選択肢

東京商工リサーチが発表した2025年の倒産統計で、「お好み焼き・焼きそば・たこ焼き店」の倒産件数が28件と、2009年の集計開始以来の最多を記録しました。

前年比は33.3%増。

なかでも近畿地方が20件と全体の7割超を占め、大阪・京都・兵庫・滋賀の地域経済を支えてきた小さな店が、いま続けざまに看板を下ろしている状況です。

この記事では、いわゆる「粉もん」業態の倒産がなぜ過去最多に達したのか、その背景にある構造を整理しながら、小規模飲食店の経営者がこの先取りうる事業再生の選択肢を、現場の声をもとにお伝えします。

廃業や破産を急ぐ前に、まず手札を並べる時間を持ちたい方に読んでいただきたい内容です。

目次

「粉もん」倒産が過去最多に達した背景

過去最多と言われると、何か特定の事件があったかのように感じます。

ところが今回の数字の中身は、特定企業の経営破綻ではなく、小規模店舗の連続的な力尽きの集積でした。

資本金1,000万円未満の事業者が28件のうち26件、率にして92.8%。

地域に根ざしてきた個人経営の店ほど、現状の経営環境に耐えにくくなっている構造が見えてきます。

食材・光熱費の高止まりが粗利を削った

小麦、キャベツや青ネギなどの野菜、豚肉、ソース、油、そして光熱費。

「粉もん」の原価を構成する要素は、いずれもこの数年で段階的に上昇を続けてきました。

一品あたりの単価が比較的低い業態だからこそ、原価の上昇がそのまま粗利の削り取りに直結します。

100円の値上げで失う客足と、上げないことで失う粗利。

経営者が日々、両方を秤にかけ続けてきた業界です。

人手不足と人件費の上昇

鉄板の前に立つ職人、ホールスタッフ、洗い場。

粉もん業態は、家族経営から少人数のチーム体制まで規模が幅広いものの、どの規模であっても人の手に依存する割合が大きい商売です。

最低賃金の引き上げが続くなかで人件費は上昇基調、加えて募集をかけても応募が集まらない。

営業時間の短縮、定休日の追加、ランチ営業の停止──こうした守りの選択を重ねるうちに、売上の天井が下がっていきます。

インバウンドの恩恵は円安で相殺された

2025年は訪日外国人旅行者数が過去最多を更新した年でもあります。

大阪・京都を中心に、お好み焼き・たこ焼きは「日本ならではの食」として観光客にも人気の業態。

客足の数字だけ見れば追い風のはずでした。

ところが、その追い風と同じ向きで吹いていたのが円安と物価高です。

観光客の来店が増えても、そのぶん原材料の輸入コストも光熱費も上がっていく。

差し引きで残るものが、想像以上に少なかった年でした。

近畿が7割超を占める理由

倒産28件のうち、近畿地方が20件。

大阪11件、京都4件、兵庫・滋賀各2件。

この偏りには、業界の地理的な集中構造が表れています。

粉もん業態そのものの店舗数が近畿に多いという背景に加えて、地域内の競合密度の高さ、観光地に立地する店舗の固定費の重さといった要素が重なります。

インバウンドが戻ってきても、家賃と人件費の上昇に追いつけなかった店から、看板を下ろしていきました。

もう一つ重要なのは、地域に長く根づいてきた店ほど、屋号と地域の信頼を背負っているという点です。

「ここで畳むわけにはいかない」という思いが、撤退の判断を後ろ倒しにします。

気がついたときには、金融機関への返済負担と仕入先への支払い、そして家族の生活費が同時に圧迫している──そんな相談が、たちばなはじめのもとにも近畿圏から少なくない数で届きます。

倒産の中身を読み解く──「販売不振」78.5%という数字

倒産原因の内訳を見ると、「販売不振」が22件で78.5%。

単純に読めば「お客様が来なかった」という話に聞こえますが、現場の景色はもう少し複雑です。

販売数量はそれほど大きく落ちていないのに、原価と人件費の上昇に値上げが追いつかず、結果として粗利と現金が回らなくなる。

これも統計上は「販売不振」に含まれます。

つまり、「集客の問題」ではなく「収支構造の問題」として倒産が起きているケースが、相当数含まれている可能性が高いと考えられます。

だとすれば、打ち手も「もっと売る」一本では足りません。

原価構造の見直し、メニュー設計の組み立て直し、価格戦略の整理、そして資金繰りの立て直し──こうした複数の軸を同時に動かす必要が出てきます。

小規模飲食店の経営者が今のうちに整えたい3つの視点

業績の谷で大きな決断を迫られる前に、小さな店舗の経営者ほど、平常時のうちに整えておきたい視点があります。

粉もん業態に限らず、原価変動の影響を受けやすい小規模飲食店全般に通じる話です。

視点①──半年先まで見える資金繰り表をつくる

毎月の入金と支出を、できれば日次の解像度で見える化しておく。

仕入れの締め日と支払日、家賃と人件費の発生日、税金・社会保険料の納付期限、借入返済日。

これらを一つの表に並べると、「半年先のどの月で資金がショートしそうか」が数字で見えてきます。

見えてさえいれば、3か月前から手を打つことができる。

見えていないと、その月になってから慌てることになります。

視点②──リスケに入る前に融資の組み直しを検討する

月々の返済が重く感じ始めたとき、最初に頭に浮かぶ選択肢が「リスケジュール(返済条件の変更)」かもしれません。

一時的に負担が軽くなる打ち手ではありますが、経営者保証ガイドラインのもとで代表者保証を外す道は、リスケに入る前と後で大きく狭まると言われています。

月々の返済を下げる目的でリスケに踏み切ると、自宅や家族の生活基盤を守る選択肢を自ら手放すことにもなりかねません。

リスケを決める前に、増額融資・借換え・保証付き融資・公的金融機関の制度融資といった組み合わせで、現状を立て直せる余地が残っていないかを一度確認する。

たちばなはじめがもっとも強くお伝えしているメッセージのひとつです。

もうひとつ、見落とされがちな問題があります。

リスケジュールを実行し、一定期間をやり過ごしたあとに通常弁済に戻して、利益を出して存続している事業体は、現場の経験則としてほとんど存在しません。

月々の負担を軽くした結果、経営の構造的な課題に手をつける時間とエネルギーが奪われ、リスケ期間が終わるころには次の延長を申し入れざるを得ない状態になっている。

そんな循環を、たちばなはじめは何度も現場で見てきました。

本来取れるはずだった選択肢が、リスケのなかで少しずつ削られていく構造です。

厳しい話に聞こえるかもしれませんが、これが現実です。

もし信じられないと感じる方がいらっしゃれば、ぜひお付き合いのある銀行員や税理士の方に、こう聞いてみてください。

「リスケから通常弁済に戻して、利益を出して存続している事業体は、どのくらいありますか?」と。

おそらく多くの方が、「ない」もしくは「ほとんどない」と答えるはずです。

とはいえ、すでにリスケに入っている方も、諦める必要はありません。

リスケ後でも取り得る選択肢は確かに残されています。

サービサー対応を見据えた組み立て直し、自宅や個人資産を守る保全設計、再生スキームのゼロからの組み立て…。

リスケ前と比べて選べる手は少なくなるとはいえ、まだ動ける余地は十分にあります。

お一人で抱え込まず、まずは一度ご相談ください。

視点③──業績好調なうちに資産保全を整える

自宅、店舗、賃貸物件、車両。

粉もん業態は、自宅と店舗を兼ねている形態も少なくありません。

事業用資産と個人用資産が混ざっている状態のまま、業績が悪化すると、家族の生活基盤までが借入の影響を受けることになります。

根抵当の設定状況、名義の整理、事業用と個人用の切り分け──こうした作業は、業績が比較的安定しているうちに動き出すほど、選べる手の幅が広く保たれます。

倒産や破産の前に──たちばなはじめの体験と支援の現場から

経営者の方が「もう廃業しかない」「破産で清算するしかない」と口にされるとき、まわりの専門家から提示された道筋がほぼそれ一択だった、というケースが多くあります。

専門領域の構造上、提案される選択肢は相談先の得意分野に寄りやすい。

だからこそ、相談する側が「他にどんな道があるのか」を一度俯瞰しておくと、判断の精度が変わってきます。

たちばなはじめ自身、かつて事業の失敗から、返済が立ち行かなくなった経験があります。

当時、複数の専門家から提示された道筋はほぼ「破産」一択でした。

それでも本人は、金融機関との交渉方法を見直すアプローチを選び、法的な手続きに頼ることなく事業を再生させました。

その実体験が、現在の支援活動の出発点です。

2026年5月時点で、たちばなはじめのもとに寄せられた相談実績は累積9,300件超、実際の支援に至ったケースは2,000件以上にのぼります。

そのなかには、地域に根ざした飲食店、家業として代々続く店舗、観光地で家族経営を続けてきた経営者の方も数多く含まれます。

「同じ立場で苦しんだ経験のある人にしか、本当の意味では伝わらない」という思いから、現場目線での伴走を続けています。

まとめ──「粉もん」の灯を消さないために今できること

粉もんの倒産が過去最多に達したというニュースは、業界の苦境を映す数字であると同時に、まだ営業を続けている経営者の方々への警報でもあります。

物価高、人手不足、円安、そして地域インフラとしての責任。

これらを一人で抱えながら、毎日鉄板の前に立ち続けている方が、近畿に限らず全国にいらっしゃいます。

大切なのは、追い込まれてから動くのではなく、半歩でも早く手札を並べておくこと。

半年先まで見える資金繰り表、リスケ前の融資の組み直し、業績好調なうちの資産保全。

順番に積み重ねるほど、未来の選択肢は広がります。

業態ごとの読み解き方や、リスケ・経営者保証・資産保全の論点をまとめて手元に置きたい方には、たちばなはじめが書き下ろした無料の電子書籍『会社と社長にお金を残す資金繰り改善の教科書』をご活用いただけます。

小さな店ほど、判断の起点となる1冊を持っておく価値があります。

業態を越えて使える「会社と社長にお金を残す基本的な考え方」は、たちばなはじめが直接お伝えするセミナーでも学べます。

教科書の内容を概論としてお伝えする場であり、たちばなスキームの全体像を受け取れる時間としてご活用ください。

すでに資金繰りに不安を感じている方、リスケや廃業を考え始めている方は、無料の個別相談へ。

長年積み上げてきたお店の灯を消さないために、今のうちにできることを一緒に整理していきましょう。


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