事務局の谷本です。
建築設備業で独立起業したのが約16年前。
起業当初、仕事を増やそうといろんな組織や団体に入っていました。
商工会、中小企業同友会、経営者団体や起業家コミュニティなど。
場違いなんじゃないかと思うほど大きな会社の社長さんなんかもたくさんいて、かなり気おくれしつつ参加していました。
今思えば、時期尚早だった気がしないでもないですが、当時は仕事を取るために必死だったんですね。
で、そんな話はさておき、年配の社長さんと話すときに決まって話題にのぼっていたのが「後継者問題」です。
私、個人的な興味から「これからの展望は?」みたいな質問をすることがよくあります。
事業や市場の将来的な見通しや計画などを話してくれてものすごく学びになるんですが、同時に悩みも話してくれます。
それが「やる人がいない」という悩み。
特に、一代で会社を大きくしたり、家族経営の社長に多い傾向がありましたね。
当時、意気投合し、よく飲みに連れていってもらっていたクリーニング屋さんの社長がいました。
信頼関係ができて深い話をするようになると、その社長は僕にこんなことを言ったんです。
「谷本くん、実はね、本当のことを言うと、もう引退したいんだよね。
私もいい歳だし、体力的にもキツいし、持病もあって大病も患ったからあんまり長くはできそうにないし、そろそろゆっくりしたいなと思ってるんだけど、代わりにやってくれる人がいないんだよ。
息子も継ぐ気はないし、かといって他に任せられるような人もいないしね。
固定のお客さんはいるし利益率もいいから食べるには困らないよ。
ここまでやってきてやめるのはもったいないから、谷本くん、会社継いでくれない?」
大口の取引先がいくつかあって、毎日入れ替えなので仕事は切れない。
受注量もそれなりにあるので、売上も安定している。
仕事を取ったり、不安定な売上に四苦八苦していた当時の私にとっては、かなり魅力的な話でした。
仕事にこだわりがあったわけでもなかったので、本気でやってもいいかなと思いました。
でも、最終的にやりませんでした。
理由は、その会社に借金があったからです。
聞けば、最近クリーニングの機械を新調した際に銀行から2000万円ほど借りたとのこと。
会社を継ぐと、もちろんその借金も引き継ぐことになります。
会社の借金ですが、社長が個人保証してますからね。
なので、もしうまくいかなくなったら、その借金は私が払わなければならない。
当時は資金繰りについて何の知識もなく、ただ単純に「2000万円の借金背負うのはイヤだなぁ」という感じでした。
よくよく聞いてみると、どうやら引き継ぐ予定だった人が、やっぱりやらないと言い出したみたい。
融資も、新社長への引き継ぎを条件に受けたらしい。
で、事業を売ろうと思ったけど、借金がネックでうまくいかなかったようです。
それから何となく疎遠になり、今はもう連絡を取ることもなくなってしまいました。
数年前、たまたまお店の前を通りかかったときには、もう営業していませんでした。
出会ったときが確か63歳って言っていた気がするので、今だともう70歳はゆうに超えているはずです。
結局、事業を引き継ぐ人は誰もいなかったんですね。
2000万円の返済、どうなったんだろ、、、
そんなことを考えながら、店の前を通り過ぎました。
事業をやめたら、当然ですが収益はなくなります。
収入がなくなるということですから、おそらく貯金や年金など、私財を投じて返済をしているんでしょう。
もしくは、内部留保から一括で支払ったか、あるいは破産か。
一括で支払ったとしても、2000万円近いお金が口座から消えるのは、中小の社長にとってはかなりのダメージのはず。
仮に機械が売れたとしても、まず同等の値段では売れないでしょうから、それなりに借金は残りますね。
もし破産していたとしたら、資産や財産はほぼ残っていないと思います。
いずれにしても、長い間懸命に商売をしてきた社長にふさわしい終わり方じゃないのは明らかです。
いくらお金を持っているのかは知りませんが(もしかすると貯め込んでいたり他で収入がある可能性もある)、老後の生活に少なからず影響はあるでしょう。
事業を引き継ぐって、思っているより簡単じゃないんだなと思いました。
↓
ゆとりある老後のための事業承継に備える
こういう場合、あなたならどうしますか?
不安を抱えた体に鞭打って、限界まで仕事を続ける?
会社をたたんで、貯金や年金から借金を返し続ける?
それとも、すべてを精算するために老後の生活を投げ売ってでも破産する?
どれを選んでも、厳しい老後が待っているのは間違いない。
でも、他にどうすることもできないと思いますよね?
実は、そんなことはありません。
事業には、いろんな出口があります。
会社を引き継いだり売却するだけが、事業の出口じゃないんです。
もっと言うと、廃業だって事業の出口の一つです。
状況によっては、「あえて廃業する」という選択が有効な場合もあります。
廃業は、事業がうまくいかなくなったときだけのものじゃないということ。
「借金があるのに廃業なんてできないよ」
と思われるかもしれませんが、廃業するのにもいろんなやり方があるということなんです。
借金があっても、廃業はできます。
もちろん、廃業しても破産なんてしなくて構いません。
赤字をたれ流しているのに、借金があるから仕方なく事業を続け、せっかく貯めた内部留保を吐き出してしまう。
それどころか、会社のお金がなくなって、社長のお金で返しているというのはよくあることです。
そうやって資産や財産を食いつぶし、スッテンテンになっていく。
事業の終わり、社長の終わりをしっかり考え準備しておかないと、、、
せっかくの苦労が水の泡になってしまうかもしれない、ということなんです。
では、どうすれば後継者や周囲に迷惑をかけず引退し、かつ社長の資産や財産を最大化し、ゆとりある引退生活を送ることができるのか?
相続診断協会のセミナーで「相続しない相続」というテーマで講演した実績もあるくらい、廃業や相続に関するノウハウも豊富です。
極めつけは、廃業しても事業を終わらせる必要はない、なんて話もあるんですが、、、
ここまでくると、もはやどういうことか意味が分かりませんよね。
自分に合った事業の引退方法は、引退を控えた社長さんだけじゃなく、現役世代もみんなが知っておくべきだと思います。
事業に関わっている以上、必要なときが必ずきます。
詳しい話は、セミナーで。
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負債を残さず資産を残す社長引退の極意
たちばなはじめ事務局 谷本